3大産地の分類と特徴
大別して、南方性(南ゴヨウマツ)と北方性(北ゴヨウマツ)があり、南方性は四国、中国地方、北方性は東北地方が主な自生地となっています。
南方性と北方性の2系列の中でもさらに、自生地によっては葉性や皮性などに違いが見られます。
四国産として有名な四国五葉、那須岳を中心に産する那須五葉、福島県の吾妻連峰産の吾妻五葉の三地性方の五葉松がよく知られており日本三大五葉松と言われています。
他には宮島五葉、アルプス五葉、蔵王五葉、浅間五葉などもあります。
四国五葉
明治時代から大正時代、昭和時代の初期に数多くのすぐれた素材を盆栽界に送り出してきた四国の山々。その四国の山の中、また西日本で最高峰となる石鎚山系の亜高山帯に産する五葉松の総称です。赤石山系、石鎚山系の2つに大別できます。
総じて言えば、樹形がよく、葉性が短めで、もっともよく知られた五葉松と言えます。
赤石山系は、どちらといえば葉が太めで、くせのない佇まいで、愛媛県指定天然記念物にも指定されており、石槌山系は柔らかく女性的な葉性であるとされています。
かつて乱獲が起きたため、許可を得た地元の採種員によって、計画的な採種がされ、素材の徹底した選別培養が、赤石五葉松盆栽組合によって成されています。
今なおある五葉松の原生林には、素材を守り抜いた、先人の熱い思いと盆栽への再生にかける努力の結晶ともいうべきものなのです。
四国五葉松の中でも、盆栽として作り方の違いから大きく2つに別れます。
高松盆栽
香川県高松市の鬼無町、国分寺町で作られる盆栽は高松盆栽と呼ばれています。高松盆栽の五葉松は、苗木から数年の短期間で盆栽らしい幹肌と樹形に作り込むために、「接ぎ木」「ねじ幹」という手法が用いて作られます。
接ぎ木は、成長の早い黒松の台木に五葉松を接ぐことで、成長の遅い五葉松を早く成長させます。
ねじ幹は、幹に針金を巻きつけて、木の成長とともに食い込ませ幹の荒れた感じや、針金に負けず太ろうとする木の勢いを促進させて、短期間で古い木の趣をつくります。
高松の職人の「作る」という意識から編み出された手法ですが、剪定や針金整枝をして仕上げた盆栽もまた、作られた感のあるダイナミックな、盆栽の王道をいくイメージとなっています。
赤石五葉松
愛媛県四国中央市で作られる五葉松は、種から長い年月を掛けて育て上げた実生の五葉松が特徴です。
接ぎ木やねじ幹といった手法はもちいられず、自然に年月を掛けて作られた盆栽が多く、樹形も、自然のなりを生かした優しい風合いが特徴的です。
同じ四国五葉松といっても、産地の職人によってこれだけの違いがあるというのは面白いものです。
那須五葉
栃木県―福島県にまたがる那須連山に産するものです。主峰の茶臼岳山麓を中心とし、北の朝日岳、赤面山、南の南月山、白笹山、黒尾谷岳への尾根つたいに、風に煽られて傾斜した樹姿を見ることができます。
自生樹には多様な葉性、肌性が見られます。葉は短く、葉色は鮮やかな緑色をしており、那須五葉松に限り、立性という形容が使われています。
這性の五葉松と区別して、枝や茎が直立して伸び、葉のヨレが少ないという点での、葉性のよさに価値を見出し、中でも極上のものを「那須の立性」としています。
吾妻五葉(福島五葉)
福島県の吾妻山や安達太郎山を中心とする吾妻連峰を中心に分布するもの。福島を囲む山々は昔から五葉松の宝庫として知られており、現在も盆栽樹形の見本として、多数の自生樹が見られる場所です。
吾妻連坊の中でも、鎌沼から平石山、一切経山(いっさいきょうざん)にかけては、葉性、肌性が共によいとされています。
標高1000m以下のものは、往々にして葉が細く、樹勢は強く幹が太くなりやすいですが、木部は軟らかく、幹肌への時代が乗りにくいようです。
葉数、芽数共に多くつく性質が往々にしてありますが、種々雑多な性質を持つ素材が多くあります。