苔古園 森高孝一

苔古園 森高孝一

自分に厳しく人に優しい盆栽職人。喜んでくれる人のために盆栽を作り続けたい。生涯現役

大自然の中で育つ1000本の盆栽

まず目に飛び込んでくるのは、園内にずらりと並ぶ大型の盆栽。大自然の中に荘厳な雰囲気で佇んでいる1000本近い盆栽は、全て森高さん1人で管理している。毎年出荷する本数を掘り起こし、鉢に植え替えるという。
「鉢上げ」と呼ばれるこの作業は、盆栽が大きくなればなるほど実に労力を要する大変な作業だ。しかし森高さんは70才に近くなってもこの作業を現役で続けている。
何十年もかけて大地に根を張り続けてきた盆栽を掘り起こすのだ。それは簡単ではないことだと容易に察しがつくだろう。
「求められたら応えたい。そして喜んでもらえると嬉しい。だからこのまま生涯現役で続けたいね。」
作業中の厳しい顔から一転、そう話す森高さんの表情は柔らかく、優しい笑顔だった。

イメージ2

自分に厳しく人に優しい盆栽職人

もちろん本職の盆栽の仕立ても間違いのない仕事で、技術の高さは職人仲間からも一目置かれるほどだ。自分に厳しく、人に優しい森高さんの性格が仕立てた盆栽にも表れている。
五葉松は他のマツ類に比べて成長が遅い。盆栽の数ある樹種の中でもその成長の遅さは際立っている。ゆえに、風格をそなえる五葉松の盆栽はかなりの樹齢を伴っている。一般的に盆栽生産者において、出荷期間までが長いと枯れるリスクや管理の手間などから、嫌がられる傾向にある。そういった傾向が、五葉松の成長をショートカットできる台木黒松への接ぎ木技術として発展してきた。盆栽の産地である高松もその一例だ。そういう風潮がある中で、成長の遅い五葉松を長い年月を掛けて幼木から育て上げてきた森高さんに畏敬の念を感じざるをえない。

イメージ3

イメージ4

和物ファンのためにメダカ販売も

そして、盆栽だけはなくメダカも数千匹を飼育して販売している。同じ和物として、盆栽と一緒に育てる愛好家が多い。これもきっかけは求められたことに始まる。今では多くの品種を育てており、中でも楊貴妃やみゆきなどが人気だという。
求められたら応えたい。森高さんの職人人生を表している様が苔古園で見て取ることができる。

イメージ6

イメージ5

優しい笑顔の盆栽家

「継続は力」であると、盆栽を取材していて改めて感じることになるとは思ってもみなかった。広大な盆栽畑を見てそう思った。
盆栽は長い年月と人の手を必要とする。すぐに結果が出るようなものではない。ゆっくりと過ぎていく時の中で季節ごとに成長していく盆栽は、森高さんによってここまで育て上げられてきた。喜んでもらえるからと続けてきたことは森高さん自身の技術へと繋がり、さらに森高さんが手掛けた盆栽は人から求められるようになる。
これからも樹々と対話を積み重ねながら試行錯誤を繰り返していくことで、森高さんの盆栽は今後もさらに人から求められる存在となるだろう。

イメージ7

苔古園(こけこえん)

苔古園
住所
愛媛県四国中央市土居町上野甲2198